<犬の歯の構造>
犬の歯(永久歯)は上顎が左右10本ずつ、下額が左右11本ずつの合計42本です。

赤丸印のしてある8番目の歯(第4前臼歯)が、文太が抜歯をした歯であり一番折れたり欠けたりしやすい歯です。欠けても気付いていないことも多いので、一度口の中を開けてみて折れたり欠けたりしていないかチェックしてあげてくださいね。(万が一文太のように歯髄が見えるぐらいまで欠けていたらすぐに獣医さんへ!)
上下ともに、白くなっている歯の部位(犬歯と臼歯)は特に歯垢がつきやすいので、毎日しっかり歯磨きしてあげてください。
<犬は虫歯になりにくい>
人間の口の中は通常pH6.7ぐらいの弱酸性ですが、(pH7.0が中性、7.0以下が酸性、7.0以上がアルカリ性)、虫歯菌が口の中に入ってきた糖質を分解して口の中に酸を作ります。そして、この酸によって口の中がpH5.5以下になると歯の表面を覆っているエナメル質が溶けて虫歯になるのです。
犬の口の中はpH8.0〜8.5のアルカリ性なので、たとえ甘いものを食べても口の中が酸性になりにくいため虫歯になりにくいのです。また、犬の唾液には糖質を分解する酵素であるアミラーゼが含まれていないことも虫歯になりにくい要因であると考えられています。
なお、人間には虫歯予防として効果の認められているキシリトールですが、犬にとっては中毒症状を起こす危険性がありますのでご注意ください。(詳しくは
「キシリトールについて」
をご覧下さい。)
<歯周病について>
歯肉(歯ぐき)に炎症を起こしている「歯肉炎」と、歯根膜や歯槽骨にまで炎症が及んでいる「歯周炎」を合わせたものを一般に「歯周病」と呼んでいますが、実に3歳以上の犬の80%が歯周病にかかっていると言われています。

食べ物のかすをそのままにしておくと細菌が繁殖し、歯周病の原因となる歯垢(プラーク)になります。歯の表面を触ってみてヌルヌルしていたら歯垢がついていると考えられます。歯磨きの目的は、この歯垢を取り除くことです。
歯垢を放っておくと唾液中のカルシウムが沈着して硬くなり歯石となります。歯石になってしまうと歯磨きでは除去できません。咀嚼をしない犬は唾液の量が少なく、歯石になるのも人間より早いのです。また、歯石は表面がざらざらしているためさらに歯垢がつきやすくなり、どんどん歯石が蓄積していってしまいます。
歯肉炎が進むと歯根膜が壊れ、歯槽骨が溶けてきて歯肉が歯からはがれてポケットができます。
さらに歯槽骨が溶けてポケットが深くなり、その中で細菌が繁殖して歯垢がたまっていきます。歯肉が縮んで歯が長く見えます。
さらに歯肉が縮んで歯根部が露出するようになります。ポケット部分には膿や血液が見られるようになります。歯槽骨の溶解が進み、歯がぐらぐらしたり抜け落ちたりします。
歯周病が何故恐ろしいか、そして長寿の秘訣が何故歯を大切にすることなのかというと、歯周病が進むと口の中の細菌が全身に回り、心臓病や腎臓病、肝臓病など命に関わる内臓疾患の原因となってしまうからです。
歯周病予防のためには、やっぱり1にも歯磨き、2にも歯磨き、3,4がなくて5に歯磨き!!歯磨きは歯の健康だけではなく、寿命を延ばすおまじないだと思っていつもがんばって文太に歯磨きをしています。
大切な愛犬の長寿のために、みなさんも歯を大切にしてあげてくださいね。
*参考資料*
●「イラストでみる犬の病気」
(小野憲一郎・今井壯一・多川政弘・安川明男・後藤直彰編集 講談社)
●「犬の病気がわかる本」 (玉川清司監修 竢o版社)
●「知ってなおす犬の病気」 (川口國雄著 誠文堂新光社)
●「楽しい解剖学」 (佐々木文彦著 学窓社)
●「続ぼくとチョビの体のちがい」 (佐々木文彦著 学窓社)
●「動物看護のための小動物生理学」
(日本小動物獣医師会 動物看護師委員会監修 ファームプレス)
●「基本からよくわかる犬と猫の栄養管理」
(桜井富士朗監修 島田真美著 インターズー)
●「図解からだのしくみ大全」 (伊藤善也監修 永岡書店) |