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狂犬病予防接種はなぜ必要か
日本では狂犬病予防法により飼い犬に毎年接種が義務づけられている狂犬病予防注射ですが、現在日本では狂犬病は発生していないのに何故いまだに毎年する必要があるのだろう?と疑問に思われている方も多いと思います。

狂犬病予防法は人間を狂犬病から守るために作られた法律ですが、狂犬病の予防接種は「法律で定められた飼主の義務だから」という理由ではなく、大切な愛犬を守るために絶対に必要だと私は考えています。


<病原体と感受性動物>
狂犬病ウイルスが病原体。犬からの感染がほとんどなので「狂犬病」と呼ばれていますが、猫、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、牛、馬など全ての哺乳類に感染します。感染動物に噛まれることにより唾液や血液にウイルスが分泌されて感染します。人から人へは感染しません。


<症状と治療法>

噛まれた部位等によって潜伏期間が変わりますが、通常は1ヶ月から2ヶ月ぐらいで発症し、人も動物も発症すると100%死亡します。

動物の場合、発熱・頭痛、倦怠感、食欲不振など風邪のような症状から始まり、知覚異常、興奮、強い不安感、錯乱、幻覚、攻撃性などいわゆる「狂犬」の症状や、水を飲むと筋肉が痙攣を起こすことから極端に水を怖がる症状(狂水病)などが起き、最終的には全身にけいれんが起きて麻痺し、呼吸停止で死にいたります。

ヒトの場合は動物と同様の症状を経て、最終的にウイルスが末梢神経から脳に達してウイルス性の脳炎で死に至ります。


<犬に噛まれたら>
狂犬病を発症してからの治療法はありませんが、感染動物に噛まれてからすぐに狂犬病ワクチンを数回にわけで暴露後接種することにより発症を防ぐことができます。 もし海外で犬や猫、野生動物などに噛まれたら、まず傷口を石鹸と水でよく洗い、できるだけ早くに病院で適切な処置を受けることが大切です。

日本では飼い犬がヒトを噛んだ場合、その犬が狂犬病に感染しているかどうかを診断する必要があります。最寄の保険所に連絡することと、噛んだ犬の「獣医師による検診」が義務付けられています。


<日本の発生状況>
1956年(昭和31年)まで毎年発生していましたが、1950年に狂犬病予防法が制定されて飼い犬に予防接種が義務付けられ、野良犬を捕獲し、輸入検疫が強化された結果、1957年を最後に国内では狂犬病の発生は認められていません。

しかし、1970年にネパールからの旅行者一名が帰国後発病して死亡した事例があり、最近では2006年にフィリピンで犬に噛まれた日本人が帰国後死亡した事例は記憶に新しいかと思います。


<世界の発生状況>

現在狂犬病の発生が認められていないのは、日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、イギリス、アイルランド、ノルウェー、スペインなど、ごく一部の限られた国や地域だけであり、世界ではまだまだ多くの国で発生しています。

WHO(世界保健機構)の調べによると、年間約5万5千人の人が狂犬病で亡くなっています。 狂犬病は世界各国でその予防と撲滅が叫ばれており、毎年9月28日は「世界狂犬病予防デー」に指定されています。


<日本に入ってくる可能性は?>
日本は島国が幸いして地続きの国と比べると他国から感染動物が入る危険性は低いと言えます。また、海外からの狂犬病ウイルス侵入を防ぐため、空港や海港での動物の検疫が徹底されています。

しかし、残念ながら現在いろんな動物が密輸入されており、検疫にかかっていない動物も多く日本に入ってきているということが考えられます。それらの動物が遺棄され野生化しているケースも多々あります。また、感染してからの潜伏期間が長いため、検疫ではクリアだった動物が国内に入ってから発症する可能性もあります。(感染から数年経ってから発症する場合もあるそうです。)

狂犬病のない島国日本であっても、いくら輸入検疫を徹底していても狂犬病が海外からもたらされる確率は決してゼロではないのです。


<もしも狂犬病が発生したら?>
万が一日本で狂犬病が発生した場合、被害を最小限にとどめるためにはやはり予防接種が重要な役割を果たします。

1998年インドネシアのフローレス島で他島から連れてこられたたった2匹の狂犬病感染犬から島中の犬へ感染が爆発的に拡大し、さらに感染犬が人を噛み人への感染も広がっていったため、50万頭もの犬が撲殺されました。 また、2006年中国でも狂犬病が流行したため、予防の名目で一部の狂犬病予防接種済みの犬も含む5万頭以上の犬が撲殺され物議を醸しました。

韓国では1984年に狂犬病撲滅に成功していましたが、1993年に再び発生するようになりました。これは、狂犬病を制圧したことにより狂犬病予防接種率が低下したことも一因であると言われています。(国立感染症研究所獣医科学部第二室 井上 智 「ズーノーシスのリスクアナリシスモデル  - 韓国の狂犬病 -」より)


<畜犬登録数、注射頭数、推定飼育数>
狂犬病予防法では、犬の所有者は「飼い犬の登録」と「狂犬病予防注射の実施」が義務づけられています。

厚生労働省の調べによると、全国の犬の登録頭数は2007年度で6,739,716頭、そのうち狂犬病の予防注射頭数は5,097,615頭です。しかし、ペットフード工業会が算出した計算によると、2007年度の日本の犬の推定飼育数は12,522,000頭となっています。日本にいる犬のうち約半数しか畜犬登録されていない計算になります。

以前愛玩動物飼養管理士の講習で講師の先生がおっしゃっていたのですが、狂犬病のワクチンはコストの関係で犬の登録数と弱冠のプラスアルファ分しか作られていないそうです。万が一狂犬病が日本で流行し、今までワクチンを打っていない犬の飼主が慌てて予防接種をしようと思っても、数が到底足りない、ということになってしまうのです。


<まとめ>

日本で狂犬病がなくなったのは、ただ単に「法律が制定されたから」というだけではなく、当時の関係者らの懸命な努力によるものであり、また一般市民及び犬の飼主の協力なしには決してなしえなかったことではないでしょうか。

今はすっかり「平和ボケ」している日本ですが、現代の医学をもってしても治療できないこの致死率100%の病気は、一歩海外へ出ると今でも横行していること、狂犬病が日本に入って自分の愛犬が狂犬病にかかる可能性は決してゼロではないこと、日本が狂犬病撲滅に成功した影には数多くの犠牲者、及びその数十倍もの犠牲犬がいたこと、そして今あるこの平和は先人の努力なくしてありえなかったということは私たち犬の飼主は決して忘れてはいけないことです。

狂犬病に関して正しい知識を持ち、今後も狂犬病を発生させない社会を作っていくことが、人間だけでなく大切な愛犬を守るための義務であり、飼主の責任だと思っています。


*参考資料 *
●愛玩動物飼養管理士1級・2級教本
●愛玩動物飼養管理士 スクーリング資料
●厚生労働省検疫所
●厚生労働省 「狂犬病について」
●国立感染症研究所感染症情報センター
●社団法人日本獣医師会 「狂犬病関連情報」
●動物衛生研究所 「狂犬病」
●WHO(世界保健機構)”Rabies”
●CDC(Center of Disease Control and Prevention)
●American Veterinary Medical Association
“What you should know about rabies”
●英国 Department for Environment Food and Rural Affairs Animal health and welfare
“Disease factsheet: Rabies”
●World Rabies Day
(フレンチブルドッグ文太部長のロハスな毎日 2009年4月11日の記事より加筆修正)