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私は繁殖の経験もありませんし全くの素人ですが、子々孫々まで健康な犬を繁殖するために絶対必要だと思われること(ブリーダーに限らず、一般の飼い主も)と費用を自分なりに考えてみました。

*繁殖者の事前勉強
 ・その犬種のスタンダード
 ・ブリーディングと遺伝子学 (ラインブリード、インブリード、アウトクロス、タブーな毛色の掛け合わせ等々)
 ・病理学(特に遺伝疾患と伝染病)
 ・犬の解剖学、生理学、行動学、生態学等
 ・牝犬の生殖生理
 ・出産後の子犬の管理(母犬の手助けや、育児放棄したとき等のこともいろいろ)
 ・その他、繁殖・出産・子犬育てに関すること全て

*両親犬の健康診断と遺伝子検査
(遺伝性疾患をもっていないかどうか、繁殖に適しているかどうか。
 動物病院の健康診断で問題なかった、という程度ではなく、遺伝子レベルでの検査)

*3代先祖(曽祖父母)まで遡っての遺伝子検査
 (遺伝子検査も完璧ではないため、両親犬の検査では反映されない遺伝子疾患が隠れている場合があります。)

*親犬の健康管理(食餌、運動、日々の手入れ)
*交配料
*母犬の出産前検診
*分娩費用
*子犬の健康診断と健康管理
*子犬のワクチン代
*親犬と、離乳後の子犬の餌代
*血統書発行
*動物取扱業者登録
 
(2006年に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」では、一般の愛犬家であっても年2回または2頭以上の繁殖・販売においては動物取扱責任者の選任と動物取扱業者登録が義務づけられています。)

今ざーっと考えてみただけなので、これ以外にもまだまだ何かしら必要なことも費用もたくさんあると思います。 その犬種を愛し、スタンダードについてよく理解し且つ健康な犬を繁殖していこうと思えば、素人の私が考えただけでも少なくともこれぐらいのことは最低限必要なのです。

心身ともに健康な犬を生み、育てるにはやはりお金も手間暇もかかりますから、健全で優良なブリーダーさんの犬なら高くて当然です。

今度は、私が考えた繁殖条件を基に「安い犬を作るには?」を考えてみました 。
*繁殖者の事前勉強
 →なし。
*両親犬の健康診断と遺伝子検査
 →なし。
*3代先祖まで遡っての遺伝子検査  →もちろんなし。
*親犬の健康管理(食餌、運動、日々の手入れ)

 →数多くの犬をケージに入れっぱなし。
  手間を省くためケージの掃除も犬の散歩もなし。
  餌は一番安いもの、もしくは人間の残飯。
*交配料
 →繁殖に向いていようがいまいが、♂と♀さえいればいらない。
*母犬の出産前検診
 →具合が悪くならければいらない。
  牝犬は初回のヒートからヒートのたびに子供を生ませる。
  産めなくなったら「処分」する。
*分娩費用
 →自分でとりあげればいらない。
  (ひどい場合は麻酔なしで帝王切開をする業者もいるそうです。)
*子犬の健康診断と健康管理
 →いらない。
*子犬のワクチン代
 →しない。
*親犬と、離乳後の子犬の餌代
 →一番安いもので。子犬はできるだけ小さいうちに売ってしまう。
*血統書発行  →しない。
*動物取扱業者登録
 →しない。
(※法律上無登録で犬の販売をするのは違法であり、罰金刑が課せられます。)

私がここに書いたのは極端な例かもしれませんが、こうすれば「激安子犬」を作ることも可能です。いわゆる「パピーミル(子犬工場)」がそうです。犬の値段は高ければいいというものではありませんが、安すぎるものには必ず安いなりの理由があります。「安い犬」の裏側にある恐ろしい事情がおわかりいただけますでしょうか。

そのような悪徳繁殖業者が増え続け、後を絶たないのはなぜでしょう?

答えは単純明快。「売れるから」です。 子犬が産まれさえすりゃーお金になるのです。 母犬や子犬の健康状態がどうであろうと。

悪徳繁殖業者(ならびに無知で安易な繁殖をする一般飼い主)を取り締まるために動物愛護法が改正され、規制が強化されました。それでも法の「抜け穴」があります。悪徳業者を廃業させるためには法律を強化するよりも、買う側がもっとよく考えなければならないのではないでしょうか。「そんなところから犬を買わない」ということが一番ではないでしょうか。悪徳繁殖業者を作り出し、ひいては不幸な犬たちを作っているのは、私たち消費者なのです。

そうして作られた「格安子犬」は、その犬種のスタンダードからかけ離れている可能性のみならず、健康状態も悪い上に生まれながらの遺伝疾患を持っている可能性が大いにあります。

犬を飼うのにはお金がかかります。犬の飼養に関する生涯費用は必要最低限でも200万円以上と言われています。 たとえば、ペットショップで「安売り」していた5万円の子犬を買ったとします。優良なブリーダーさんの良血統で健康な子犬が30万円だとすれば、子犬を購入した時点では25万円「得をした」ことになります。 でも、その「格安子犬」は健康状態が悪くて病気がちだったり生まれながらに遺伝疾患があって毎月の治療費が2万円ぐらいかかるとすれば、その差は1年でなくなります。それどころか、10歳まで生きるとしても、10年間の治療費としても240万円が加算されるのです。

「格安」で買った犬にそれだけ多額の治療費がかかったらどうしますか?子犬の値段に少ししか出せない人が、一生犬の面倒を見続けるだけの費用は出せるのでしょうか?

犬は金持ちしか飼っちゃいけないとは言いません。私自身も決して裕福ではありませんし、工夫次第でお金をかけなくても健康で幸せでいられると思います。でも、最低でも食事代、ワクチンやフィラリアなどの予防医療費、突然の病気での治療費など何かしらお金がいるものです。

犬を飼うにはもちろん愛情が必要です。でも、愛情だけでは犬は飼えないんです。シビアな話ですがお金も絶対に必要不可欠なんです。

これから犬を飼うことを考えている方は、子犬の値段だけではなく、生涯費用まで考えて飼ってください。(私は文太を飼う前に「犬貯金」をしていました。)

そして、くどいようですが、何回も言います。 一度迎え入れた犬は生涯責任を持って世話をしてあげてください。 責任が持てないのなら最初から犬は飼わないでください。

ひとりひとりが犬を飼う前によく考えること。
一度飼ったら生涯手放さないこと。
そして、簡単に繁殖しないこと。

たったこれだけのことで、世の中から不幸な犬は激減するのです。
(フレンチブルドッグ文太部長のロハスな毎日 2009年3月6日の記事より加筆修正)
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